前夜,21時前から睡魔が襲ってきて,本を読んでいても一向に進まない。
 気がついたら,パタリと本を落としたところだった。
 どこまで読んでたんだっけ?
 諦めるかとベッドに入って背を目一杯立ち上げてそこに寄りかかりながら,脇のテレビを見ていたが,そのまま眠ってしまったようである。

 気がつくと,1時14分。
 カラダは少し傾いていたがベッドに寄りかかったまま,テレビは点いたままだ。
 背を30度ぐらいの角度にして,本格的に寝ることにする。

 こんどはなかなか眠れない。

 それでもトータル4時間近くは寝たみたいだから,まあいいか。

 「処置灯」のスイッチを入れて,パソコンを開く。
 酸素の吹出口とか医療用コンセントとかアースとかがまとまっている装置というか設備というかが頭の上にある。
 ずうっと処置灯の存在には気付かなかったが,ある朝採血のときに看護師がつけたのでわかった。
 光の色は妙に黄色い。
 処置等というからには,医療者が作業をするときにつけるのではないかと思われるが,こんな色温度でOKなのだろうか。
 黄疸ぽいですねとか判定されたりしないのだろうか。

 パソコンやっているうちに4時になったので,再び寝ることにする。

 眠れない。
 へその位置が,肋骨よりかなり下にあるのに気がついた。
 以前の腹は小山のように盛り上がっていたはずだが。
 痩せやたのか。
 もうすぐ,お腹と背中がくっつくぞ!って状況かもしれない。

 結局,5時から1時間ぐらいは寝たような気がする。
 半覚醒の状態だったかな。
 金縛りにあいそうな睡眠状態だったと思う。

 6時40分。検温と体温。

 7時15分。血糖値。
 昨日の夕方の数値を記録し忘れていたので聞く。
 覚えたつもりなのだが,すぐに忘れる。
 その場でパソコンに記入しておかないとダメである。
 パジャマ換えますかと聞かれたので,お願いする。
 最後のパジャマだな。

 猛烈な肩こり。
 もともとひどいが,今日はそれを上回る。
 変な姿勢で寝て,変な姿勢でパソコンをやったからだろう。
 進歩しない男である。

 7時45分 朝食。
 服薬。

 昨日あたりから,食べたものを飲み込むときにつっかえる感じが強くなった。
 飲み込みにくいのである。
 今日は一段と強くなった気がする。
 食事を残そうかと思ったくらいである。
 食道がんか?

 しかし,がんが数日で巨大化するとも思えないよなあ。

 お茶を飲みながら考えた。
 今食べているのはピーナツバターを塗った食パンだから,水分が少ない。
 そもそも一口のサイズが大きすぎるのではなかろうか。
 食べ物に執着しないと言いながら,実は執着しているのではないか。
 1日1,800キロカロリーでは足りていないのではないか。
 無意識のうちに大食い早食いをしているのではないか。
 ものすごい勢いでかき込んで,大きな塊のまま飲み込んでいるのではないか。

 少し落ち着け。

 お茶を飲んだところで,軽く一口。
 ゆっくり噛む。
 飲み込んでみる。
 通るようだ。

 まあ,家に帰ってからじっくり様子を見てみよう。

 突然だが,涙もろいのが私の困ったところ。
 以前はこんなにひどくはなかったと思う。
 16年の暮におふくろさんが亡くなって,葬儀の挨拶の途中突然号泣したのには周りも驚いたろう。
 30年以上前,父親が64歳で亡くなったときにはきちんと冷静に話せたと思うのだが,この退化(進化?)ぶりはどうだろう。

 最近は,テレビドラマを見ていてもウルウルくるのでなんとも始末におえない。
 きょうの朝ドラ「エール」(双浦環が船頭小唄を歌う回)を見ていても,5回ぐらいはウルッと来てしまったのでこんなことを思い出した。
 主治医と話をしていて5年生存率50%なんて話をしていたときには知ってますぐらいでなんともなく,どの時点が基準なのかなどと聞いたりしていたのだが,そのあと妻に生存率50%というときにはちょっとウルッと来て会話が途切れたよ。

 なんというか,話の内容がどうのこうのと言う以前に,悲しいとか死ぬとかなにか情緒的なものをきっかけにこうなる感じだ。
 うまく説明できないが,ここは泣くべきシーンみたいな基準点が私の頭のどこかにあって,そこで閾値を超えると自動的に涙が出て,結果悲しく感じるみたいな気がする。
 順序が逆かもしれないが,そんな感じがする。

 泣くから悲しいのだな。

 相手がいるときにこうなったりすると,不審に思われるかも。
 そこ泣くところかい!?

 ゴミの回収。
 新人だった。
 2日に渡って回収し忘れたおじさんは引退かしら。
 ちょっと聞きづらい…。

 9時30分 リハビリ。
 いつものS君。
 歩くときに「浮遊感」があると言ったら聞き返された。
 カラダがふわふわする感じ,浮いている感じ,足がしっかりついていない感じ,ふらつく感じと伝えた。

 外を歩く。
 数メートルのちょっとした坂を上がっただけで,酸素飽和度86とか。
 やっぱりだめかと絶望的な気持ちになる。
 階段1階分は92。
 なんとかなるかな。

 自室に戻ってマッサージとか。
 凝った肩が気持ち良い。
 自分で開業すれば儲かりそうだねと言ったら,なんと理学療法士ってそのまま独立して開業とかできないらしい。
 処方箋で動きますからって。

 お金にも興味があるらしいのでいろいろ話した。
 デフレのままだと給料上がらないよ。
 私が若い頃は,定期預金の金利8%なんてこともあったよ。
 株にも関心を持っているというので,ETFを勧めておいた。
 人間の欲望から考えて,凸凹はあっても長い目で見れば世界の経済は右肩上がりになると予想されるから,世界全体にかけるETFを時間をかけて買うのが無難かなあ。

 通じたかどうかはわからない。
 東京アラートの話もしたし,アメリカの暴動の話もした。
 体重かけて首を押し続けるなんて,あれは公然の殺人だよなあ。

 ずうっとしゃべっている。
 たばこを1本も吸ったことのないこの私が,こんな病気なんてとつい愚痴も出る。
 彼も吸わないという。

 しかし,入社して10年くらいは副流煙吸いまくっていたのは事実。
 会議の席が煙でもうもうでねと言ったら,会議でたばこを吸うんですかとえらく驚いていた。

 はい,出ました。
 昔は常識でした。
 私の場合そこに2時間もいると頭が痛くなってきて,ときどき中座して外の空気を吸っていたよ。
 会議が終わらず,木賃宿みたいなところに部屋を取って徹夜でやるなんてむちゃくちゃな時代だった。

 仕事場の銘々の机の上にも,鋳鉄製の社名入りのやたら大きく重たい灰皿が置いてあった。
 ひっくり返したりしないようにという創業者のアイデアだそうだ。

 ここ30年ぐらい,頭痛は経験していないな。

 結局,私は一人の無垢な若者を洗脳しているつもりかもね。
 作業療法士と理学療法士の区別もついていない私であるが。

 床掃除。新人だった。
 廊下に出たら,いつものおじさんがいた。

 昨日の彼女と立ち話。
 お父さんは今頃畑仕事をしているはずって。
 娘と話しているようなものだな。

 10時40分 主治医が来て,会議が入ったので説明を1時間遅らせてほしいとのこと。
 女房に連絡。

 うにちゃん(愛猫:21歳)の具合が心配である。

 昨日の主治医との会話で羽毛の話が出たときに,ペットの毛とか皮屑(ひせつ:フケ)はどうかと聞いたのだが,ちょっと違うかなが答えだった。
 ちなみに皮屑なんて単語が出てくるのは,息子のアレルギー検査で数値が高かったから。
 うにちゃん大好きだが,実家に来ると体調が悪化するという息子である。

 11時20分 午前のリハビリはもうなさそうなので,自主トレ。
 端の部屋にいつもいるおばあさんはこのところ寝ていることが多い。
 起きているときはカーテンを開けて廊下側を見ているので,目が合えば挨拶をする。
 微かに首を振ってくれる。

 デイルームで酸素飽和度をチェックしていたら,声をかけられた。
 血糖値のチェックだった。
 わざわざ台車を押してきてくれたのだ。
 これはなんて呼んでいるの?と聞いたら,「台車」だそうだ。
 カートとか,キャリーとかもう少し気の利いた名称があるのかと思っていた。

 12時 昼食。

 13時30分 最後のリハビリ。
 担当メインのI君。
 エレベーターで膝に20cmぐらいの大きな縫い目のある若い女性と一緒になった。
 看護師に付き添われた車椅子の上で,夢中でスマホをいじっている。
 超ミニスカ状態でパンツが丸見えだったが,ここではまあ無問題。
 病院だから。

 パンツに目がいったのは,少しは元気になったということかしら。
 目の前でかがんだ看護師の制服の中が見えても,何の感慨も覚えなかった私である。

 外に出て240m位を歩いたが,これでハーハー息が切れてしまう。
 酸素飽和度86。

 駅まで歩いて帰ろうと思っているのだが,2~3回休めばいけるかな。
 自室に戻ってストレッチ。
 肩こりの対応を教えてもらう。
 肩もみゃあいいってもんじゃないのだな。

 長い間いろいろありがとう。

 15時 オフェブについて色々調べる。
 副作用がきついと嫌だなあ。
 かなりの割合で下痢になるらしい。
 便秘の次は下痢かい。
 顎の骨が腐るとか,相当にビビるよな。
 急性増悪になるとか,今回の入院と同じじゃないか。
 すぐに死んでしまっては飲んだ意味がないな。
 高価な薬ということだが,いったいいくらするんだろうね。
 恐ろしいから調べなかった。

 まあ,いくら考えても仕方がない。
 飲んでからの「お楽しみ」ということで…。

 15時半 血圧と体温

 日記を付ける。

 主治医の説明までまだ間があるので,テレビを見る。
 「ひよっこ」
 「あまちゃん」以来,朝ドラはほぼ欠かさず毎日見てきた。
 昼の再放送だけどね。
 「あまちゃん」はツイッターでの評価を見て,途中から見始めてハマってしまった。
 次に面白かったのがこの「ひよっこ」
 物語の流れのバランスがよかった。
 ピチピチ弾けるような青春群像。
 シシド・カフカがますます好きになった。
 いまの「エール」は時々ダレる印象があるが,まあそれなりに面白い。
 廿日市の秘書が特に気に入った。
 こんな感じの看護師さんいるぞ。

 克明につけているつもりの日記だが,テレビで何を見たとか書いていなかったな。
 看板倒れである。

 16時55分 ノートパソコンとスマホ,念の為延長ケーブルも持って部屋を出る。

 17時 ナースステーション脇に座る妻とは3週間ぶりの濃厚接近。
 狭いところではやりたくないなあなどと話す。

 17時5分 主治医がエレベーターから降りてきた。
 もうひとり若い医師もいる。
 このへんでやりますかと普段理学療法士などが詰めているコーナー(すでに無人)に入って,パソコン画面の前に車座になる。
 CTの画像や血液のデータを画面表示しながら,説明を受ける。

 このあたりはLINEに書いたとおりであるが,オフェブが去年12月に認可されたというのはIPF向けということでオフェブそのものはもっと前からあるということと,肺に古い病巣があることを書き忘れた。
 これは,固まったような状態で治らないらしい。

 まあ,間質性肺炎はそもそも治らない病気だから。

 進行するだけである。

 CTの画像をディスプレイに表示しながら説明してくれたが,酷い肺の映像だな。
 入院直前は,まさに白インクを筆の先につけて振り回したようなハチャメチャぶりである。
 白い滴が一面に飛び散っている感じ。
 ただ,私が見てこりゃダメだと思った白い部分は別の臓器だったのはシロートの浅はかさ,ご愛敬。
 しかし,いちばんがっくりきたのは22日後のきのう撮ったCTで,そこにも白い斑点がかなりの数見られたということ。
 血液検査の数値から感染の度合いを表す数値が0を続けているので,「増悪」は収まったと判断したということらしい。

 IPFに関しては,昨日の説明よりもこちらに近いという印象を受けて,少し落ち込んだ。
 気管支洗浄のデータから,IPFとPF-ILDのどちらに近いのかわかるのかと質問したが,ちょっと曖昧な感じだった。
 もちろん,医者がすべてわかるわけではないことは百も承知。

 17時2分 女房から荷物を受け取り,洗濯物を渡す。
 部屋まで入ってきて,トイレとか覗いている。
 シャワーカーテンがないのは,感染防止のためかなと私。

 17時半 自主トレ
 途中,看護師に引き止められ廊下で血糖値の検査。
  
 18時夕食。
 服薬

 18時半 自主トレ。今日の歩数が少なかったので,夕食後も歩いてみた。

 看護師にシャワーを浴びるからと,電極をもらう。

 個室のおじさんが騒いでいる。聞き耳を立てればトイレが詰まったらしい。
 この時間じゃ誰もいないかしら,明日の朝かしらと看護師。
 とりあえず,廊下のものを使ってくださいって。
 
 19時過ぎ シャワー。
 いろいろコツを覚えたところで,最終回である。
 便座下にも毛が落ちていたのできれいにした。

 本を読む。読み終えないな。
 しかしまあ,次から次へとグロい仕打ちを考えるものだ。
 作家の神経を疑うよって,カリ・モーラの話。
 面白いんだか,面白くないんだかよくわからない。
 まあ,ハンニバルでも生きながらの脳みそ食っていたしなあ。
 映画も見た。

 21時過ぎ。血糖値。
 端末が朝からバッテリー残量の警告を発していたので見せる。
 取り替えますね,ってポケットから電池を取り出した。
 ドラえもんのポケットのようにいろいろ出てくる。

 主治医の話を読んだ息子からLINE。
 刺激が強いかなあとは思ったのだが,ああいう反応をされると嬉しい。

 いい奴である。

 あとは頼んだぞ!

 LINEで「わしにもオキシトシンを!」とあるのはNHK「あさイチ」を見てのこと。
 オキシトシンが増えると幸せに感じるらしい。

 最後の夜なので,書きすぎたかも…。

朝食昼食夕食